参議院議員 中曽根弘文
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慶應キャンパス
参議院議員 中曽根弘文

「価値観多様化の時代」
 第二次大戦後、経済復興の掛け声のもと、日本は目覚ましい発展を遂げ、経済大国と呼ばれるまでになりました。しかし、戦後の繁栄を支えてきた日本の社会構造は、世界的な大きな変革の流れの中で、政治、経済、教育などを始めとするあらゆる分野において抜本的な改革が必要となっています。
 こうした大変革期において、新しい時代の「リーダーの不在」ということが言われていますが、決してかつてのように優秀な人材がいなくなったということではないと思います。現在の平和と繁栄の中で社会が複雑化し、また国民の価値観が多様化しており、社会全体が一つの方向や目標に進むことが難しくなっているということだと思います。人々の目指す方向が多様化したからといってリーダーが不必要になったということではなく、様々な分野で時代をリードしていく人材は必要であると思います。

「リーダーに求められるもの」
 リーダーは未来への明確なビジョンを持ち、これを人々に示し、夢や希望を与えられる人でなくてはなりません。そうしたビジョンを人に伝え、理解してもらう能力も必要です。そのためには人を引きつける人間性というものが不可欠です。単に知識や技術の面で秀でているということだけで人は付いてきません。
 その人に人間としての幅や深み、品格といったものが備わっていることこそがリーダーには欠かせません。そうしたものは哲学や文学、科学、歴史、美術、宗教などを始めとする幅広い分野での教養のうえに様々な経験を積んで身につけられるものです。
 国際的な交流が進む中で、学問的素養の乏しい人は外国の人からも尊敬されません。特に、自国の文学や歴史、伝統といったものを学ぶことは大切です。
 大学生となったからには、自分が専攻する分野での勉強は当然ですが、いろいろな書物に親しんで幅広い教養を身につける努力をしてほしいと思います。

「気品の泉源、智徳の模範」
 最近、企業、官公庁、マスコミ等での不祥事、お年寄りや子供を対象とする犯罪の増加など様々な事件や事故が多発し、社会全体のモラルの低下が大きな問題となっています。将来の日本を担う学生の皆さんは自らのモラル、倫理観を高めていく努力をしてほしいと思います。高い倫理観というのは社会をリードしていく人にとっては特に重要です。どんなに立派なことを主張しても、モラルのない人は信頼されないからです。
 福澤諭吉先生の「気品の泉源、智徳の模範」という言葉があります。これは、「知識」も大切であるが「気品」をより重視するということであり、慶應義塾は単に知識を得るだけの所ではなく品格のある立派な人間を作ることが第一であるという考えを表した言葉です。つまり、ジェントルマンたれ、ということです。皆さんもこの精神を大切にしていって欲しいと思います。

「スポーツを通じて」
 私は塾の高校、大学を通じて體育会陸上ホッケー部に所属していました。練習と試合の毎日の七年間でしたが、おかげで多少のことではへこたれない頑丈な身体を作ることができました。ホッケーは英国発祥のスポーツですから、紳士の気質と集団の規律が重んじられる競技です。チームスポーツというのは、自分の都合で練習を休むこともできず大変なところもありましたが、一つの目標に向かってみんなで力を合わせ、自らも一つのことに全力で打ち込む、というかけがえのない体験をすることができました。私はホッケーを通じて心身を鍛え、先輩・後輩のよい人間関係を築くことができました。学生の皆さんには、特にどの競技ということはありませんが、スポーツを通じて心と身体を鍛えて欲しいと思います。
 慶應義塾は学問・スポーツに打ち込む環境が良く整っている大学だと思います。日本の未来を担うのは自分達であるという気概を持って、限られた時間を有効に使い、大学生活を有意義に送って欲しいと思います。

平成12年2月号より転載

 


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